【PICK UP INTERVIEW vol.4】新しい団体らしい 働き方から持続可能で、成果を出せる組織へ Climate Integrate 平田仁子さん

Hoopus.(フーパス)は、鎌倉サステナビリティ研究所が運営する、サステナビリティと気候変動問題の解決に特化した求人サービスです。PICK UP INTERVIEWでは、気候変動解決に関わるお仕事情報をピックアップ。それぞれの団体で働く人々の熱い想いや職場の雰囲気をお伝えします。

 2021年、長年の気候変動への取り組みが国際的に評価され、環境部門のノーベル賞とも言われるゴールドマン環境省を受賞した平田仁子さん。新たな活動のチャプターとして、2022年、Climate Integrate (クライメート・インテグレート)を発足させました。どのような想いと期待を込めて新たな団体を立ち上げたのか、そしてどんな仲間を迎え、どんなチームを作り上げていきたいのか、お伺いしました。

※この記事は、2022年2月の取材をもとに2023年12月に一部編集を加えたものです。本文中にある肩書き・組織説明・制度内容などは最新のものと異なる場合がありますのでご了承ください。


Climate Integrate 平田仁子さん

長年日本のNGOで気候変動、特に石炭火力発電の廃止に取り組んでいる平田さんが、今回新たな団体での取り組みをスタートしようと思った理由を教えてください。

今、気候変動対策は、とても大事な局面を迎えていると思います。

「2050年ネットゼロ」「カーボンニュートラル」など、たどり着かなければいけないゴールが明確になってきて、さまざまなアクターと一緒にスタートラインに立てるようになってきました。

これまではゴールがそろっていないために会話が平行線を辿っていたいろいろなアクターが、明確になった目標に向かってどのように協働するか。どのように必要な知見を身につけ、必要なスキルを取り入れながら、障壁を乗り越えていくか。そういうステージに入っています。

そこで、”インテグレート” = 統合という言葉を団体名に入れて、新たな枠組みで活動を始めようと考えました。

実行のステージに入っているからこそ、さまざまな力と専門性を結集して、行動に転嫁させていく活動が必要です。

現場を見ると、意思はあっても細かな課題にぶつかっていたり、そもそもの認識が足りないだけで本当は実行に移せるポテンシャルがあったりと、いろいろな要因で動けていない現状が見えてきます。

必要なのは、「できない」を「できる」にする、「わからない」を「わかる」にするために、欠けている知見や考え方、道すじを提供すること。そして、さまざまなアクターと対話し、科学的知見に基づいた行動を実行に移すために、緻密な議論をすることです。

気候変動対策をいかに、いい形で統合していくか。そこにチャレンジしたいと思っています。

まずは、温室効果ガス半減の目標年である2030年までに、一定の成果を出すことを目指して、活動計画を立てています。

そして、日本ではまだ、気候変動対策に取り組む担い手が欧米に比べて不足しています。クライメート・インテグレートでは、人材を育てて、気候変動への取り組みをリードする人材とネットワークを拡大させることにも貢献したいと思っています。

気候変動対策を加速させるムーブメントの中で、クライメート・インテグレートはどのような役割を担っていきたいと思っていらっしゃいますか?

クライメート・インテグレートで私が目指したいのは、専門的なシンクタンクの機能を持った独立型の非営利組織です。

最初にNGOに入った時から、民間のシンクタンクが必要だと何年も思い続けていました。

様々なアクターと対話していく上で、いわゆる”御用学者”の研究に左右されない、信頼性の高い情報を提示できることはとても大切です。中立的な研究機関は、協力することはほとんどなく、距離をおいている場合が多いですが、クライメート・インテグレートでは、研究機関と協力して研究発表をするといったこともできる団体を目指したいと思います。

ただ、研究結果を発表するだけではなく、社会や政治が取り入れなかったら意味がないので、シンクタンクとしての分析能力を備えながらも、それを社会に伝える橋渡しの機能も担っていきたいと思っています。シンクタンクの専門的な部分と、NGOが行う働きかけや対話のような「つなげる」部分とを、ハイブリットするようなイメージです。そのユニークさを備えた組織を目指していきたいと思っています。その思いから、独立型の非営利組織と称しています。

神奈川県横須賀市で地元住民の方との石炭火力発電所予定地を見下ろす

今回新しい組織で、まっさらな状態からチームを作るにあたって、平田さんが思い描く理想のチームについて教えていただけますか?


新しいチームでは、団体のビジョン、組織に込めたい思いを共有できていることが重要だと思っています。それぞれが独立して決まったことをこなすというよりも、大きなビジョンのもとに、自由度と柔軟性を持って、創造的に仕事をして、お互いに刺激し合えるようなチームを目指したいと思っています。

私自身もチャレンジしながら作り上げていく新しい組織なので、スタートアップへの意欲を持って、その面白さを感じながら、2030年までに一定の成果を出すことを目指しています。

クライメート・インテグレートの活動の柱となる分野について、チームの役職の例も交えて、簡単に教えてください。

まず、気候政策・データ分析部門のプログラム・ディレクターは、国際・国・地域にまたがる気候変動に関する政策変容を実現するための、分析と提言などの仕事をリードします。

サステナブル・ファイナンス部門のプログラム・ディレクターは、日本の金融セクターの動きを加速させるアプローチを考え戦略を作り上げていきます。パリ協定から、金融や投資はダイナミックに動いているので、そこをいかに後押しできるのかを活動の柱にしていきたいと思っています。

コミュニケーション・ディレクターは、気候変動に関して今知らなければならない情報をまとめていく役割です。

マネージメントスタッフは、新しい組織が成長していくためにとても重要なポジションです。クライメート・インテグレートが目指しているのは、さまざまな取り組みを複合的に実践することなので、本格的に進めようと思うと人が増えなければいけません。パッションを持った人が、きちんと仕事として働ける場所を提供し、活動の必要性がある限り組織がしっかり存続して成長していけるようにしたいと思っています。

クライメート・インテグレートを「職場」として、どのような場所にしていきたいと思っていらっしゃいますか?

私自身、24時間気候変動が頭から離れないタイプで、情熱があるからやり続けられているようなNGOの仲間と、ひぃひぃと必死になりながら活動してきたんですよね。これは持続的でも健全でもないし、もちろん、このような働き方は人には強要できません。

やはり職場なので、働いている人たちが健全に、そして幸せに働ける組織を目指したいんです。

欧米の団体のように、休む時は休む、時間で区切る、一人で抱え込まない。だけど、目指すミッションに向けて、最大限の力を発揮できるよう協力する。そんなメリハリのある仕事のモデルを作りたいと思っています。

国連の会議で記者会見をする平田さん

2022年に新しく作られた団体らしい、働き方も多様で、ゆとりとメリハリがあり、みんなが楽しくできる仕事。人として生きていて、やりがいと生きがいを感じられる職場を目指したいです。

欧米の団体の採用情報を見ていると、まずその組織で働くとどんなベネフィットがあるか、という説明から始まるんですよね。

「トレーニングの機会が豊富で、自分自身を高められます」とか「ヨガが受けられます」とか「金曜日はビールが飲めます」とか(笑)、こんなに素敵な職場ですとアピールしているんです。もちろん、その後に、とてもハードルが高い、求められる経歴やスキルが書いてあるんですが…。

やってもらいたいことの前に、「ここで一緒に働こうよ!」というメッセージを感じます。だから私も、「一緒にやろうよ!」という気持ちで採用活動に臨んでいます。

楽しく働くのは、温暖化を楽しく扱おうということとは違います。

気候変動の取り組みは、希望を持って社会は変えられるという信念を失わずに取り組むことが重要だと思いますが、現実、本当に厳しい状況で、実現しなければいけないことはものすごく大胆です。そこから目を背けても答えは出ません。

でも、どんな厳しいことを求め、要求し、実行しようとしても、その中で、一人ひとりが貪欲に「幸せに生きる」ことを求めてもいいと思っています。

今生まれついている一人ひとりの生きる権利として、その人がどんな境遇にあれ、苦しんだり悲しんだりせず、笑って暮らす権利がありますから。
私も、新しいスタートを機に、心にゆとりを持ちながら、でも希望を持って前に進めたらいいなと思っているんです。


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