【Meet KSI vol.7】サステナブルファッションと非営利のダブルワーク - 気候危機のためにできることは全部やったと思えるように KSI 事務局 白石綾
サステナビリティスペシャリストの育成をめざす「鎌倉サステナビリティ 研究所(KSI.)」のメンバーのこれまでのキャリアや、気候危機をはじめとした環境問題に関わる思い・課題を聞いていきます。今回は、ファッションデザイナーで、KSI.の「サステナブルファッション講座」を受講したことをきっかけに事務局スタッフとなった白石綾のストーリーをお届けします。
こんにちは。KSIで、SNSやメールマガジンのコンテンツ作成や、ウェブサイト、リーフレットなどのデザインのほか、求人サービス「Hoopus.」事務局を担当している白石綾です。
KSI.でのお仕事と並行して、ファッションデザイナーとして、アパレル企業さんを対象にCSRや人材育成のアドバイザーをしたり、ファッションと環境をテーマに市民向けのイベントを開催したりしながら、現在はアパレルブランドの立ち上げのために奮闘中です。
デザイナーとして気づいたファッションの環境インパクト
小さな頃からファッションデザイナーになるのが夢でした。新卒で入社したオフィスカジュアル系のアパレルブランドで、販売員を経験した後にファッションデザイナーになりました。夢を叶え、先輩や上司に恵まれて楽しく充実した毎日を送っていました。
自分の頭の中にあったものが形になる。常に最新のトレンドに触れて、社内・外の色々な方と関わりながら仕事をする。すごくキラキラした仕事ですよね。
しかしその反面で、業界に対して漠然とした違和感がありました。当時はその違和感の正体がわからないまま、ただ「服を作ることをやめよう」と退職して留学をしました。
その違和感の正体に気づいたのは、「サステナブルファッション」という言葉に出会った時です。
ファッション業界は世界第二位の環境汚染産業です。地球環境だけでなく生産に関わる地域の人々にも大きな影響を及ぼしています。アパレル企業として利益を優先して大量消費・大量生産を促しながら、消費者としてもトレンドに合わせてたくさんの服を買う。その結果地球環境も、誰かの暮らしも、自分自身もすり減らしていく。「あのモヤモヤ、自分だけの問題じゃなかったんだ!」サステナブルファッションについて知るにつれ、そう思うようになりました。
それから人生が180度変わりました。元々大好きだったファッション。ただ離れるんじゃなくて、アパレル業界をもっといいものにするために、できることがあるはずだと思ったんです。
サステナブルファッション講座をきっかけにKSI.事務局へ
当時はイタリアに住んでいたので、すぐにイタリアの教育機関を調べて、ミラノの学校でサステナブルファッションに関する夏季コースを受講しました。
アパレルの製造工程の人権問題について学んでいた時、私が「日本ではそんなこと起きてないと思う」と発言したら、講師に「世界中どこでも起こりうるし、日本でも起きているよ」と言われ衝撃を受けました。自分が自分の国に対して無関心だったことを思い知りました。
日本のファッション業界の状況について調べるようになり、KSI.の「サステナブルファッション講座」を見つけ、すぐに受講することにしました。
業界を変えるチェンジメーカーになる!がコンセプトのKSI.の「サステナブルファッション講座」では、インプットとアウトプットを交互に行いました。最終発表会に向けて、自分は何がしたいのか、どんな風に業界を変えたいのかを具体的に考える機会がたくさんあり、気がついたら、自分もチェンジメーカーになれるかも!という気持ちが育っていたと思います。
サステナブルファッションへのパッションを共有している受講生は、講座を通して仲良くなり、自然とコミュニティになりました。私はボランティアとしてコミュニティを盛り上げたり、SNSの投稿をお手伝いしたりするようになりました。
それをきっかけに第二期サステナブルファッション講座の運営サポートなど、プロジェクト単位でKSIに関わるようになり、Hoopus.のサービスを拡大するタイミングで事務局として誘っていただき、本格的に参加することになりました。
自分ができることは全部やった、と思えるように
今は、自分のバックグランドでありパッションでもあるアパレル業界をよりサステナブルにするために貢献しながら、気候変動問題の解決にも自分の力を役立てるために、理想とする姿に向かって泥臭く進んでいく時期だと思って、いろんなことに挑戦しています。
KSIの事務局以外にも、サステナブルファッションのアドバイザーやファッションと環境をテーマとして地域で活動をしながら、アパレルブランドを立ち上げるために起業の準備をしています。自分のブランドでは、「服の地産地消」をビジョンに、商品やライフスタイルを提案していきたいと思っています。
少し前までは、「自分たちの子ども・孫の世代に良い未来を残すため」みたいな言葉をよく耳にしましたが、気候変動がもう目の前に迫って「自分自身の命が危ない」と感じるようになりました。
今のままでは2050年には地球の平均気温が3℃も上がる可能性があると予測されていますが、2050年には私は60代なんですよね。今の両親よりも若い年齢です。どこかで遠い未来だと思っていた2050年は、もうすぐです。
自分ができることは全部やった。そう思って2050年を迎えられたら良いなと思っています。
行動しているうちにチャンスを掴み取れる
月並みな言葉ですが、やりたいことがあるなら、そこに向かって小さなことからコツコツやるしかないんですよね。そうしているうちにチャンスを掴み取っている方をたくさん見てきました。
もし、サステナビリティ・気候変動に関わる仕事につきたいと思っていて、すぐに転職するために必要なスキルがないと感じているなら、まずは自分が今持っているスキルや興味・関心を活かして、小さなことでも経験してみる、行動してみることをお勧めします。
講座に参加してみる、コミュニティに入ってみる、そういったところから人脈が広がっていくかもしれません。自分が今いる会社でチャンスがあるなら、国際企業イニシアチブへの加盟を提案したり、サステナビリティに関してプロジェクトやPR戦略を提案してみることから、実績につながるかもしれません。その実績が転職の大きな強みと何より自分の自信につながると思います。
一歩ずつ前に進んでいると感じられる
私は非営利で働くのはKSI.が初めてですが、非営利で働く方の多くがおっしゃるように、どれだけ社会に良いインパクトを与えられるかを評価基準にして働けるので、本当に気持ちよく仕事ができています。もちろん、プロジェクトとして達成目標もあるので、プレッシャーもありますが。
ビジョンを共有する人たちと知恵を出し合って、一歩ずつ前に進んでいると感じられる瞬間がやりがいです。一人でできることは少ないですし、大きなインパクトを与えられるわけではないのですが、その中でも今自分が持っているスキルや時間、人脈を最大限活かせる方法はどれなのかを考えながら行動するようにしています。
私と同じように、一人でも多くの人にサステナビリティ・気候変動の解決のために働くことのやりがいを感じてもらいたいと思っています。