【気候変動を知ろうVol.1】サステナビリティに携わりたい人材が知っておくべき、気候変動の基礎知識
今日、さまざまな場所で目にする「気候変動」という言葉。年々増加する猛暑日や頻発する自然災害などにより、危機感と共に多くの関心を集めています。同時に気候変動に関する情報も増え、インターネットで検索すれば簡単に知識を得ることができます。その一方、膨大な情報を前に、どこから手をつけて良いのか迷うこともあるかもしれません。
このシリーズでは、サステナビリティに特化した求人プラットフォーム「Hoopus.(フーパス)が「サステナビリティを仕事にしたい」「気候変動対策に貢献したい」と考える方に知っておいてほしい気候変動の知識をご紹介します。全3回にわたる本シリーズ。初回となる今回のテーマは、「気候変動の基礎」です。気候変動の要因やその影響、対策に取り組む上での大切な考え方についてお伝えします。
そもそも「気候変動」とは。「地球温暖化」との関係
はじめに、言葉の定義についてみていきましょう。
⚫︎気候変動
数十年もしくはそれよりも長い間持続する気候状態の変化のこと
⚫︎地球温暖化
人間活動により放出される温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜鉛化窒素、フロンなど)によって地球が暖められること
「気候変動」は、太陽周期の変調や火山噴火などの自然要因によって引き起こされるほか、人間活動に直接あるいは間接的に起因するものがあります。そのひとつが「地球温暖化」です。つまり、地球温暖化は、人為的な要因によって引き起こされる気候変動と言えます。
地球温暖化はなぜ起こる?
それでは、地球温暖化はどのようにして引き起こされるのでしょう。
通常、太陽から届くエネルギーは、熱として約7割が海面や地表に吸収され、残りの約3割が宇宙空間に放出されます。太陽の熱を地球上にとどめ、人間活動に適した気温に保つ役割を果たしているのが、二酸化炭素や水蒸気などの「温室効果ガス」です。
ところが、この温室効果ガスが増え過ぎてしまうと、本来宇宙に放出されるはずの熱が地球上に残り、気温の上昇が起こります。これが「地球温暖化」です。
温室効果ガスのうち、最も多いのは二酸化炭素です。排出源は、発電所や製油所といったエネルギー転換部門や工場などの産業部門、運輸部門など。中でも、化石燃料を燃やすことで二酸化炭素を排出するエネルギー転換部門や産業部門が大部分を占めています。
このように、地球上の二酸化炭素濃度は上昇し続け、あわせて世界の年平均気温も上昇傾向にあることがわかっています。
地球温暖化により頻発する災害、生活への影響
こうして引き起こされた地球温暖化は、極端な気温や降水、湿度、台風などの異常気象をもたらします。
それにより、世界各地では異常気象による被害が拡大。皆さんも「災害のニュースを目にすることが増えた」と感じている方がいるのではないでしょうか。
<災害の実例>
⚫︎ハリケーン・サンディ(アメリカ)
2012年10月22日、カリブ海で発生したハリケーン「サンディ」。キューバ、ジャマイカ、ハイチなどカリブ海諸国やアメリカ合衆国に被害をもたらしながら北上し、170人以上が犠牲になりました。
(参考:https://www.cnn.co.jp/usa/35023987.html)
⚫︎熊本豪雨
2020年7月3日夜から4日朝にかけて熊本県南部を襲った記録的な大雨。24時間に400㎜を超える雨量を観測し、各地で川や支流の氾濫、土砂崩れが発生。気象庁は県内で初めて「大雨特別警報」を発表しました。一連の大雨による死者は65人。戦後最大級の水害と言われています。
(参考:https://kumanichi.com/theme/gouu2020/year)
⚫︎山火事(アメリカ・ハワイ)
2023年8月、ハワイのマウイ島西部で大規模な山火事が発生。火は市街地まで萌え広がり、死者は102人にのぼりました。焼失した住宅はおよそ2,200棟。12,000人もの住民が家を失い、ホテルなどでの避難生活を強いられました。
(参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240809/k10014543891000.html)
⚫︎能登豪雨
2024年9月、年始に起こった地震から復興を進めていた石川県能登半島を豪雨が襲いました。20以上の川が氾濫し、犠牲者の数は15人。専門家はこの豪雨の要因の一つに能登沖の海面水温の上昇があると指摘。気候変動と豪雨災害が密接に関係してることが示唆されました。
(参考:https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_675bea0fe4b004dbae19461c)
影響は災害のような突発的な現象だけではありません。食糧生産や経済活動、日常生活などの人間活動にさまざまな形で影響を及ぼす可能性があります。
<想定される人間活動への影響>
⚫︎極端な気象現象によるインフラ機能停止
⚫︎熱波による疾病や死亡
⚫︎気温上昇や干ばつによる食糧不足や食料安全保障の問題
⚫︎水資源不足と農業生産減少
⚫︎生態系、生物多様性がもたらすさまざまなサービス損失
既に深刻な影響を与えている「海面上昇」
中でも、海水の熱膨張、氷河・氷床の融解によって起こる「海面上昇」は既に大きな影響を及ぼし、早急な対策が必要とされています。
上記のグラフの通り、世界の平均海面水位は約140年前から21〜24cmの上昇を記録。温暖化がこのままのペースで進めば、2100年には2000年比で2.5m海面が上昇すると予想されています。同時に、温室効果ガスの排出量を抑えられた場合は0.3mの上昇に抑えられるという予想も発表されています。
劇的な海面の変化により深刻な影響を受けているのが、フィジー共和国、ツバル、マーシャル諸島共和国などの海抜の低い島国です。高潮により海水が住宅や道路に入り込んだり、飲み水が塩水になったりと生活に大きな影響が出ています。そこで平均海抜1.5mのツバルでは、2002年7月からニュージーランドへの移入を開始。ツバル政府は国民が「環境難民」であることを国際社会に訴えています。
こうした海面上昇の被害を受ける国々は、そのほとんどが二酸化炭素排出量の少ない発展途上国です。それにもかかわらず、工業化した経済先進国によって引き起こされた地球温暖化の影響を最も深刻に受けているのです。
日本にとっても関係のない話ではありません。海抜1m未満の場所が国土全体の0.6%である日本は、海面1mの上昇で全国の砂丘のうち9割以上が失われると予測されています。また、40cmの海面上昇で120m分の干潟が消滅するとされ、沿岸部の生態系に大きな影響を及ぼすことが考えられます。
さらに大阪都心部では海面が1m上昇した場合、北西部から堺市にかけての海岸線はほとんどが水没すると言われています。同様に、東京でも堤防を高くするなどの対策を取らなかった場合、江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区のほぼ全域が影響を受けることが想定されています。
気候変動に対する2つの視点、「緩和」と「適応」
世界中で多大な影響を与えつつある気候変動。急激な変化のスピードに対応していくために、「緩和」と「適応」という2つの視点を持つことが求められています。
「緩和」とは根本的な解決を目指す視点のこと。これに基づき、温室効果ガスの排出削減や吸収へ向けた対策が取られています。
ところが、緩和の効果が現れるには長い時間がかかるため、過去に排出された温室効果ガスの蓄積による、ある程度の影響は避けられません。そこで必要とされるのが「適応」です。既に起こりつつある気候変動の影響を最小限に抑えるため、リスクの回避・軽減のための備え、そして新しく生じた気候条件の利用が不可欠とされています。
<緩和の例>
⚫︎化石燃料の廃止
⚫︎エネルギーの高効率化
⚫︎再生可能エネルギーの主力電源化
⚫︎森林破壊の停止、海洋生態系の回復、再生型農業等によるCO2の吸収源対策
<適応の例>
⚫︎異常気象を想定したインフラの整備
⚫︎気候変動の影響を受けても回復力のある農
⚫︎熱中症の早期警告インフラ整備
「緩和」の対策として、パリ協定では各国にNDC(温室効果ガスの国別削減目標)を5年ごとに準備・提出することを義務付けています。
それにあたり、日本を含むG7加盟国は「1.5度目標と整合するNDC」を提出することを2024年のG7プーリア・サミットにて約束。今年2025年には2035年までの次期NDCの提出が義務付けられています。
【気候変動を知ろうVol.2へ続く】
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担当ライター 山口翠
神奈川県出身、北海道在住。大学時代に野生動物の生態研究に取り組み、卒業後「書くことで自然や社会に良い影響を与えたい」とライター・編集者の道へ。「自然と暮らしをつなぐ」をテーマに、聞いたり、書いたりしています。関心領域は、環境問題、自然、風土など。