NGO/NPOのスタッフ30人に聞きました!
非営利セクターのお仕事のリアル
身近にNGOやNPOで働いている人がいない、新卒から企業でキャリアを積んできた、という方は、実際非営利セクターで仕事をするってどういう感じなのか、イメージが湧きづらいのではないでしょうか?
今回は、環境問題に限らない様々な領域で活動する非営利セクターのスタッフ(フルタイム・パートタイム・業務委託)の方30人にアンケートにご協力いただき、非営利セクターのお仕事のリアルな事情を教えていただきました。
始めたばかりの方からベテランの方まで
今回のアンケートには、非営利セクターで働き始めたばかり、という方から、10年以上携わっているという方まで、様々なキャリアの段階にある方にご協力いただきました。
8割以上の方がフルタイムの有給職員で、気候変動から教育、人道支援まで、様々な分野で活動分野は、多岐に渡ります。
80%の方が、非営利セクターでの「いまの仕事に満足」
8割の方が、現在の仕事に満足していると回答しました。回答者に教えていただいた、満足している理由、そして非営利セクターで働くことならではのメリットは、大きく3つのポイントにまとめることができました。
1.価値観と仕事内容の一致
「基本的に、自分の価値観に沿っている仕事をさせてもらえると思う」
「前職の経験を使って、100%環境問題にコミットできる仕事ができているから」
「意義ある社会的変化を生み出すことができるから」
「生きがいと直結している」
「心に矛盾を抱えずに業務に取り組むことができる。自分たちが社会を変える一員であると感じることができる」
「人の役に立つことができる」
2.熱意ある同僚や環境
「やりたいことを実現出来るから。素晴らしいチームに恵まれている」
「仕事を通じて会う人たちも”お金”ではなく、”社会的インパクト”のものさしで尊敬できる方々なので、全体的にとても幸せ」
「熱意溢れる人達に囲まれて、自分の好きな分野で仕事ができているから」
「社会問題への関心が高く、仕事にモチベーションが高いスタッフと一緒に働ける」
3.裁量が大きい
「自分の意見を発言しやすく、すぐに行動に起こせる、イノベーションを起こしやすいところが魅力」
「やるべきことを自分で提案し、了承が得られれば行えるため、自らが効果があると考えることに専念できる」
「自分でやりたい事業を始めたり、活動のバランスを決めることもでき、とにかく自由にかつやりがいのある働き方をさせてもらっている」
「若手でも裁量が大きい仕事をしやすい」
逆に、満足ではない理由として、「慢性的人手不足に悩んでいる」「常に人手不足で雑用に時間がかかることもある」など、人財不足について不満の声も上がりました。不満や課題については、後半でもさらに深掘りしていきます。
また、別の視点では、今の仕事自体にやりがいを見出しているというよりは「興味のあることをするための最初の入り口として、短期間の経験を積む場所」という回答もありました。
73.3%が一般企業経験あり
今回のアンケートの回答者の7割が、一般企業で働いた経験がある方々でした。
現在に至るまでのキャリアは、アパレル企業、金融機関、メディア・報道機関、旅行会社、出版社、飲食店など人それぞれ。
また、ワーキングホリデー、青年海外協力隊、パートタイムで働きながらボランティア、など、多様な経験を経て現職にたどり着いたという方もいました。
回答者の中には、新卒でファーストキャリアとして非営利セクターで働き始めたという方も、4人(回答者の13%)いました。
一般企業経験者で、ギャップに戸惑った方は63.6%
一般企業を経験したことがあると答えた方のうち、63.6%が、NGO/NPOで働き始めたときにギャップや戸惑いを感じたそうです。
最も目立った理由は、少人数の組織・スタートアップの組織であることによって、大企業では整備・分業・アウトソースされていることでも、すべて自分でやらなければいけないということでした。
なんでも自分でやらなければいけない
「誰がやっても出来るように様式化された会社環境から、探して調べて無いものを作る環境への変化に戸惑った」
「運営や資金調達も含め、事業や活動は全て自分で決めて担っていくという点」
「大企業から移ったので、組織として事務的なことや職場のルールなど未熟なことが多くて、困ることがあった」
評価基準が明確ではない
「正解がなかったり、評価が明確じゃないことも戸惑いだった」
「KPIが数値的な指標ではなかったこと」
労働環境・条件
「(大企業に比べて)給与や雇用条件、福利厚生の整備がされていない点」
「周りに理解されづらい」
「ほとんどの人が社会人を経験して中途入職している職場なので、入職してすぐに、そのポジションのプロとして意見を求められる点は、最初は驚いた」
労働環境や条件について寄せられた意見は、後半でも詳しくご紹介します。
93.3%が「NGO/NPOで働く特有の難しさ」を感じている
ほとんどの人が、NGOやNPOで働く特有の難しさやストレスを感じていると回答しました。最も目立ったのは、「給与が低く、福利厚生が不十分」という点でした。
労働条件・環境
「求められる責任・能力と比較して、収入が低くて不安定」
「先輩等が少なく、キャリアステップが見えづらい」
「みんな少なからずビジョンや想いを原動力にしていると思うので、休みを取りたいと言いづらい雰囲気がある」
「人が少ない。いろんなことが属人的」
日本におけるNPO/NGOの立ち位置
「特に地方において、『NPO/NGOって大丈夫なの?』といった信頼度がまだ低いと感じる」
「家族や友人に理解してもらうことが難しく、特に年配の人(例えば近所の人や趣味のコミュニティ)にはまだ話しにくい」
成果が見えにくい
「活動の成果が見えにくい」
「ビジョンミッションと現場でできることとの乖離」
「国の政策を変えることをがゴールの一つであったりするので、なかなか成果があがらないということがあると思います」
また、「働く上では、NPO/NGOでも一般企業でも大きく変わらない」という意見もありました。
NGO/NPOで働き始める前に考えたいこと
アンケートの結果をご覧になって、いかがでしたか?
30人程のアンケートではありますが、やりがいを感じられる仕事である一方、持続的に働くためにまだ課題があること、そして転職する上で、乗り越えるべきギャップがありそうだという状況が見えてきましたね。
これからNGO/NPOでの仕事をしてみたいと思う方は、このような点について自分で考えておくといいかもしれません。
1. やりがいと心身の健康のバランスをとる
NGO/NPOでも企業でも同じことですが、パッションを感じる仕事であればあるほど、自分の時間を犠牲にしてでも仕事ができてしまうかもしれません。
”やりがい搾取”状態に陥ってしまわないように、注意が必要です。
一方で、リモート勤務やフレックスタイム制を取り入れたり、フルタイム以外にも勤務形態を設けたりする柔軟性がある団体も増えてきています。健康や心の状態を客観視して、上司やチームのメンバーと、自分自身がサステナブルに働ける方法を見つける必要がありそうです。
2. 自分のライフプランと条件を照らし合わせる
必要な給与や好ましい労働条件は、人それぞれ違います。
もし給与が下がる場合、自分がやりたいことができるなら生活レベルを下げても大丈夫!と思うかもしれませんが、提示された給与とご自身のライフプランと照らし合わせて、真剣に検討する必要がありそうです。
いくつかの仕事を掛け持ちする復業(副業)という選択肢もあります。また、求人情報で条件が提示されていても、ご自身の経験次第では、交渉が可能かもしれません。
3. 仕事内容の期待と現実のギャップを埋める
小規模な団体では、予想していなかった業務範囲も担当しなければいけなかったという声が多く寄せられました。人事担当や上司となる人、同じチームとなる人などと話す機会を作ってもらったり、まずはプロジェクトベースで関わる、プロボノやボランティアで関わるなど、職場の雰囲気をしる機会を作ったりして、なるべく自分の想像と実際の仕事内容にギャップがないようにしておくとよいでしょう。