会社員からのキャリアチェンジ!
環境問題に関わるキャリアの創り方

“自分のキャリアを、会社に預けたままでよいのだろうか?” 

“安定した仕事を辞めてでも、やりたいことへ挑戦するべきだろうか”

忙しい毎日の中でも、ふと、そのような想いが湧き出てくることはありませんか?

そのような時は、自分のキャリアを見直すタイミングです。キャリアコンサルタントでもある筆者が、社会情勢の変化とキャリア自律、そして、個人がやりたいことに向けて一歩踏み出すためのヒントをお伝えします。


キャリア自律が求められる社会的背景

2019年、経団連の当時の会長が「終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている」という発言を行い、話題となりました(経団連HPより2019年5月7日会長発言要旨)。時代の変化の中で、どの企業でも今の事業が長期間継続するとは考えにくいため、経営層も従業員も事業転換と職種転換に取り組み、社内外での活躍の場を模索して、就労の継続に努めて行く必要があることを指摘したのです。

実際に、企業においては副業解禁や新規事業の推進が加速しています。その背景には、グローバル化による海外市場獲得や多様な顧客ニーズへの対応、デジタル化によるビジネスモデル変革等があります。それらの対応のために、企業は、社員が副業や新規事業を通して新たな知見を取り入れることで、ビジネスモデルの変革に貢献することを期待しているのです。

個人においては、副業体験や新規事業への挑戦等で新たなスキルや知見を習得し、自ら活躍の場を切り拓いていくことが期待されています。つまり、会社が示す方向性だけでなく、自らの価値観や目指す姿であるキャリアビジョンを持ち、主体的に動いて経験・スキルを蓄積していく「キャリア自律」が求められているのです。実際に、企業へ従業員の能力開発の目的を訊いた調査では、「自律した従業員の増加」が1位となっています(注)。

注:『日本の人事部 人事白書2020 』P.303 – 従業員のキャリア開発支援を行う目的(4620社回答)

また、2019年の政府の働き方改革法案施行等により、企業は、在宅勤務や短時間勤務導入などの多様な働き方の推進が進んでいます。労働人口が減少する中で、介護や育児などの事情を抱える人など誰もが就業機会を得て、能力を発揮できる環境の整備も進められています。

副業解禁や在宅勤務の導入等は、企業にとっては人事制度や従業員の能力開発について見直す機会となり、個人にとっては自分のキャリアについて内省を深める機会にもなったのではないでしょうか。

個人の視点で考えるキャリア自律

個人側に視点を移すと、2000年代以降、緩やかな動きがありました。就職氷河期やリーマンショック等のよる影響や、2011年の震災の経験により、「自分のキャリア・人生は自分でコントロールしたい」と考え、行動を起こす方が増えていたのです。

リンダ・グラットンによる書籍「ワーク・シフト」「ライフ・シフト」はベストセラーとなり、勉強会も多く行われました。そのような中で、個人は、教育→就職→引退という一直線の人生だけでなく、就職後もリカレント教育・起業等の複数の経験を積むマルチステージの可能性について考えるようになったのです。

筆者は約10年前からフリーランスとして活動を始め、フリーランス向け人材エージェントの業務やNPO法人での活動に関わる中で、“キャリアを自分で決めたい”という方に多く出会ってきました。例えば、会社員でありながら副業ができる企業を選び業務委託の仕事を獲得する方や、NPOやNGOのメンバーとしての活動にも力を入れて複数の強みを持つ方などです。

その中で、「環境問題の解決」という言葉を頻繁に聞くようになったのは2016年以降です。SDGs (持続可能な開発目標)が、前年の国連サミットで採択され、日本でも目標達成に向けての活動が広まってきた時期です。そのような背景から、「フードロス」「衣料品のリサイクル」「水の使用量の削減」「森林伐採」等、自身が関わる事業や生活に身近な問題から環境問題に興味を持つ方が増えてきたのです。

中には、具体的に環境問題に関わる仕事へのシフトを考える方や、学生時代に従事していた国際協力などの活動を想い出し、「社会人経験を積んだ今だからこそ、挑戦したい」とキャリアチェンジを考えるというケースもあります。

では、環境問題に関わるお仕事へのシフトを考えた時に、何から始めていけばよいのでしょうか?

求人の種類から考える、自分に合ったキャリアチェンジ法

環境問題に関わる仕事を行う企業やNPO・NGO法人では、主に以下のような職種の募集があります。

  1. 事業のディレクター
  2. コンサルタント、研究員等
  3. 広報・企画・マーケティング等
  4. 人事・経理・総務等
  5. 事務局業務

非営利セクターでの実務経験がなくても求められる職種に必要な経験と知見があれば挑戦しやすく、ニーズが高いディレクターやコンサルタント等であれば、報酬交渉もしやすいでしょう。一方で、環境問題に関する知見が少ない場合は、経験がある職種に注目して応募し、入社後に知見を増やしながらキャリアアップを図っても良いでしょう。あるいは、講座受講や大学院への進学等を通して、専門性を磨いた後にキャリアチェンジを考えても良いでしょう。KSIでもESGアナリスト講座、ソーシャルオーディット講座、サステナブルファッション講座を開講しており、多くの方に受講いただいています。

キャリアチェンジの前に、まずは副業やプロボノとして体験する方法もあります。例えば、メール対応などのアシスタント業務やイベント運営、ライター業務など、稼働時間が少なくても関わりやすい業務に、パートタイムや業務委託、プロボノとして参加する方法です。カルチャーフィットを確かめてから、フルタイムの求人に応募して本格的にジョインしてもよいでしょう。

さて、環境問題に関わる仕事を行う企業やNPO・NGO法人へキャリアチェンジをする際に、一番求められるのは、「環境問題解決への想い」です。環境問題に取り組み社会を変えていきたいという熱意を持ち、貢献したいという意志を持つ一人一人の力で、社会は変わっていきます。

やりたいことがある、今がそのタイミングと思ったら、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。