「NGOも企業も、ミッションの元で働く上で違いはない」
企業とNGOを行き来するキャリアの描き方
柏木愛さん

企業で経験を積んできた方にとって、非営利セクターへの転職は勇気がいる決断かもしれません。不安の要因のひとつは、その後のキャリアパスではないでしょうか?「非営利セクターに転職したら、その後のキャリアはどうなるんだろう?」

新卒で輸送機器関係の企業に就職した柏木さんは、東日本大震災をきっかけに国際環境NGOに転職。5年の経験を経て、自然エネルギーの電力会社に転職します。企業 → NGO → 企業とキャリアを歩んできた柏木さんに、それぞれの働き方の違いや、キャリア選択の指針についてお伺いしました。


Q. 柏木さんは、企業からキャリアをスタートされたんですよね。

元々環境保護の仕事がしたいと子どもの時から思っていました。

環境保護の活動=NGOという意識だったので、大学卒業後はNGOヘの就職も検討しましたが、当時のNGOは新卒採用は稀で、社会人経験3年以上が必須というところが多かったんです。

そこで、学生の頃インターンをしていた人道支援のNGOの職員の方にキャリアの相談をしました。その方は、企業からの出向でNGOで働いている方だったのですが、企業で組織がどう動いているのか自分の目で見てから、NGOに転職するのもいいんじゃない?とアドバイスをいただきました。企業で経験を積んできたその方の仕事への姿勢や専門性には、尊敬できるポイントがたくさんありました。

そのため、まずは企業で経験を積むつもりで、関心があった輸送機器業界を選んで、就職しました。

Q. 企業からの転職を考えられたきっかけは何かあったんですか?

私が入社した会社は、国内では大きな企業だったというのもあり、先輩方を見ていると、何年先にはこうなるというキャリアパスが、自然と見えてきました。この先を想像した時に、男性が多い会社の中で、ずっとこの会社でやっていくんだろうか?という疑問も持っていました。でも会社を辞めた後の自分にどういう価値があるのかその時は自信がなかったので、転職先は探していなかったんです。

そして、入社5年目の時、東日本大震災が起きました。

あの時多くの人が、「このままでいいんだろうか」と思ったのではないかと思いますが、私も自分はこのままでいいのか?と考え始めました。疑問を抱えながら企業で働き続ける人になりたくないな、と。

そして、NGOを含めてチャンスを探していて、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの広報の仕事を見つけました。広報の経験はありませんでしたし、当時は自信がなかった英語での面接では思いを表現しきれなかったこともあって、「落ちたな…」と思ったのですが、採用の連絡をいただきました。

Q. 企業からNGOへの転職に不安はありませんでしたか?

世間が持っているNGOへのイメージが、必ずしもポジティブではない点は気になっていました。自分自身はそう思ってないからいいんだけど、家族はどう思うだろう?と。

でも、その時に相談した先輩に言われたんです。「本当は悩んでないんだよね?行ったらいいんじゃない?って言われたいんでしょ?」って。その通り、図星でした。

そのアドバイスもいただいて、決心がつきました。その時は、その次のキャリアについては何も考えていませんでした。念願の仕事ができる!という気持ちでした。

Q. 企業からNGOヘ転職して、戸惑ったことやギャップなどはありましたか?

良いギャップも、戸惑いもありました。

企業では、男性社会の中に女性がいるという環境でしたが、環境NGOで私が働いていたチームは女性ばかりでした。

男性ばかりの環境では、何を発言しても「女性だから」「女性なのに」「若いから」という定冠詞がついていたんですよね。それがまったくないのがうれしかったです。

一方で、多くの意見を尊重するが故の意思決定プロセスの煩雑さや、それぞれの目標を掲げたチーム同士でぶつかり合うこともあったりして、NGOも組織という面で直面する壁は企業と共通すると思う点も多くありました。

でも良かったのは、NGOにはソリューション志向の人が多いからか、そういった問題を話し合うことに安心感があるということです。私の企業での経験では、問題が起きても「その問題に突っ込むの?」とタブー感があったり、「毎回のことだから」と諦めて終わってしまうことがほとんどだったので…。

環境NGO時代、海外の同僚・ゲストと

Q. NGOからまた企業へ転職したきっかけはなんですか?

NGOでは、広報として1年半、エネルギー問題の担当として3年半、勤務しました。エネルギー問題の担当として、色々な自然エネルギーの事業者さんとお会いしてお話を伺う中で、自然エネルギーの発電所を増やすためにもより現場に近い場での経験を積みたい、と思うようになって、この次は、絶対に自然エネルギーの事業会社へ、と思っていました。

NGOを退職してから、自然エネルギーの電気を扱う企業でアルバイトとして働き、その後ドイツで自然エネルギーの電気を供給する電力会社でインターンをしました。そして帰国後、長野県飯田市を拠点としたおひさま進歩エネルギー株式会社に転職しました。NPOを前身とする、自然エネルギーの発電事業を主に行う会社です。

Q. NGOから企業に転職したいま、両者の違いをどう感じますか?

改めて、それぞれの役割があると感じます。

NGOやNPOは、進むべきゴールやビジョンを提唱して、目標を高いところに定める役割ですよね。例えば、エネルギー問題なら、エネルギー基本計画で自然エネルギーの割合を100%にするというゴールに向かって走っていく人たち。それに対して企業は、それぞれの分野で事業活動をして、自然エネルギーの実例を作っていく人たち。私はそのように整理しています。

NGOにいたときは、自然エネルギーが増えるように「自然エネルギーが増えるのを阻んでいる制度上の障壁を取り除く」といった検討を進めていたのですが、自分の仕事に実態が伴っているか不安に感じていました。でも、いざ企業の中で自然エネルギーの実例を作るという立場になると、目標が大事なんだなと感じるんです。

自然エネルギーの導入目標によってビジネスの環境が整えられる側面は大きく、目標が高ければ高いほど事業が広がります。

どのような立場から課題に取り組むかという違いなのだと思います。

それに関わる人も、ビジョンを示すのが得意な人や実例を作るのが得意な人というグラデーションの中で強みがあると思います。私自身、両方に携わってみて、ビジョンを語る方が得意だったのかもしれないなと感じます。今後のキャリアで、またNGOを検討することもあるかもしれませんね。

Q. NGOヘの転職に不安がある方に、アドバイスをいただけますか?

NGOで働いているときには、次に企業で働きたくなったときに、選択肢が狭まってしまうんだろうか?という不安は、なくもなかったです。

でも、NGOを退職するときには、不安はありませんでした。

NGOが社会全体からネガティブに思われているわけではないし、団体と私個人のアイデンティティは別です。それに、自分自身が世の中にある全ての会社から「いいね」と思ってもらえる必要もありません。

自分がどういう分野で、どういう役割を担っていけるのかが見えていて、ある程度自分の側からも選択できるような経験値を積むことができていれば、不安は減らせると思います。

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