【PICK UP INTERVIEW vol.9】リサーチやデータ分析の経験を活かし国際的でフラットな環境で気候変動に取り組む Transition Asia 久保川健太さん
Hoopus.(フーパス)は、鎌倉サステナビリティ研究所が運営する、サステナビリティと気候変動問題の解決に特化した求人サービスです。PICK UP INTERVIEWでは、気候変動解決に関わるお仕事情報をピックアップ。それぞれの団体で働く人々の熱い想いや職場の雰囲気をお伝えします。
今回お話を伺ったのは、Transition Asiaの久保川健太さん。Transition Asiaは、企業の気候変動アクションを加速させることにコミットしたシンクタンク型のNGOです。現在、ESGデータアナリストとして、データ分析の経験を気候変動分野で活かしたいという新しい人財を募集しています。ご自身が、リサーチのバックグランドを生かして転職してきたという久保川さんの視点から、異業界からの転職についてもお聞きしました。
まずはTransition Asiaが目指していること、そして活動の内容を教えてください。
Transition Asiaのミッションは、アジア地域、特に日本と中国で、温室効果ガスの排出量が多い企業の気候変動対策を加速させることです。パリ協定で採択された、温暖化を1.5℃までに抑えるという国際目標に沿うように、エネルギーと経済を変化させていくことを目指しています。
我々の活動の特徴は、需要側の企業、製造業などのエネルギーを多く使う企業をターゲットにしていることです。電力需要の大きい企業が気候変動対策を進めようとすると、電力の脱炭素化は不可欠です。需要側の企業に働きかけて気候変動対策を加速させることをテコにして、電力会社などの供給側も変えていくという戦略です。
もう一つの特徴は、シンクタンク型の非営利団体であるということです。企業の排出削減戦略などについてしっかりと調査や分析を行って、根拠に基づいたエビデンスベースの提言を行い、解決策と合わせてターゲット企業に提示し、丁寧に対話を重ねていきます。
シンクタンク型の団体とはいえ、調査結果を発表するだけでなく、企業の気候アクションを加速させるという結果を出すことをゴールにしているというのが特徴的ですね。
シンクタンクというと、調査を淡々と行うところが多いと思うんですね。一方でキャンペーン団体というと、内部に調査部門を持たず、キャンペーンを専門にやっているという団体が多いです。
僕たちは、シンクタンクとして調査する機能を持ちながら、キャンペーンNGOのロジックも戦略もわかる。お互いに助け合いながらやっていけるところが非常にいいと思っています。エビデンスベースで地に足をつけて調査をしながら、社会に与えられるインパクトを意識して活動するという、中間のいいとこどりだと思います。
具体的にはどのようにキャンペーンを一緒に進めていくんですか?
僕たちは直接企業に対してキャンペーンをするというスタンスはとっていないので、パートナーとなるキャンペーン団体と協力しています。
現在行っているキヤノンに対するキャンペーンを例にお話しすると、このキャンペーンでは、Action Speaks Louder、InfluenceMapなどのNGOと協力しています。
キヤノンは、動きの速いテクノロジー業界にいます。しかし、気候変動対策に対しては保守的な姿勢をとっています。ブランドイメージでは世界的といっていい企業ですが、内側を見てみると他の日本企業と比較しても温室効果ガス排出削減のパフォーマンスがよくありません。
パートナーのAction Speaks Louderはキャンペーン団体で、どのようなデータがあるとキャンペーンに役立つかなどのノウハウを持っているので、ヒアリングしながら調査をデザインしていきます。InfluenceMapは、キヤノンが所属している経団連などの業界団体におけるキヤノンの立ち位置や、気候変動ポリシーへの業界団体のスタンスなどについての情報収集で協力してもらい、スコアリングや効果的なメッセージの送り方に活かしていきます。
アウトプット段階では、パートナー団体が展開するキャンペーンの中で、主張の裏付けとして調査結果を活用してもらったり、自分たちでも日経新聞などのメディアに対して、より専門的な視点からビジネスリスクや投資家の動きなどについて情報提供を行ったりしています。
パートナー団体と共同することで、活動を調査や分析にフォーカスして専門性を高めていらっしゃるんですね。現在募集している役職も、ESGデータアナリストという調査・分析のお仕事ですね。
現在募集しているのは、日本語ができるESGデータアナリストです。
僕自身は日本アナリストという役割で、日本での活動全般を担当していますが、調査活動はデータのモデリングや分析を担当するリサーチリードと一緒に行っていて、僕が収集してきた日本企業のサステナビリティレポートや日本政府の統計などを元に、リサーチリードが2030年までの排出経路の予測などの分析をします。
新しく入っていただくESGデータアナリストの方には、このような調査活動を僕たちと一緒に進めてもらいます。
企業の情報は英語でも公開されていることがほとんどですが、例えば日本国内の電力の排出系統の排出係数など、経産省のファイルを掘り起こさないと見つからないデータもあるので、日本語ができるデータアナリストにそういったところを担当してもらいたいです。また、NGOとの会合やカンファレンスでは、データ分析を担当した本人が話した方がいい場合もあるので、そのような場で団体を代表して話すことも担当していただく予定です。
日本出身である必要はありませんが、日本語での読み書きができ、コミュニケーションがスムーズにできる方が望ましいです。
気候変動や非営利などの経験がない人でも挑戦できるお仕事でしょうか?
一番に期待することは、データフォーカス、データオリエンテッドであることです。気候変動に関連したバックグラウンドでないとダメということではありません。
最近中国でもデータアナリストを採用したのですが、その方のバックグラウンドも、ESGや気候関連ではなく、金融機関でデータを扱う仕事でした。金融や事業会社などどのような業界でもデータアナリストはいると思いますが、プロジェクトベースで働いている人なら違和感なく仕事ができるはずです。気候変動についてパッションがあれば、どのようなバックグランドでも大丈夫です。
久保川さんご自身も、非営利団体でのお仕事はTransition Asiaが初めてですよね。働き始めてからギャップなどは感じませんでしたか?
いま入職して1年ですが、満足度は高いです。
僕はイギリスの大学院でサステナビリティについて学んだあと、イギリスの通信社のジャーナリストや、ノルウェー大使館の専門調査員、在大阪米国総領事館のアナリスト、在台湾のロンドン証券取引所グループのESGアナリストなど、ずっとリサーチを専門にやってきました。
日本に帰国後Linkedinでこの仕事を見つけたのですが、募集要項を読んだ段階でリサーチオリエンティッドだなという印象を受けました。ギャップを感じることもなかったですね。
メディアでも大使館や総領事館でも、リサーチをして、カウンターパートに会いに行って結果を説明をするというようなことをやってきたので、分野は全然違いますが、本質は変わらないんじゃないかなと思います。
Transition Asiaは、東アジア地域にまたがったグローバルな団体ですが、どのような組織文化なのでしょうか?
現在は、7人がチームとして一緒に働いています。ほとんどのメンバーは本部のある香港にいますが、僕のように他の地域でリモートで働いている人もいます。
週1〜2回程度、全体の会議とアナリストの会議をリモートでやっていて、大まかな方針をそこで合意して、あとは随時チャットなどを使って独立して仕事を進めていきます。
組織のカルチャーはすごくフラットです。もちろん決定権者はいますが、そこに至るまでの話し合いのプロセスで意見を伝えることができ、よい意見であれば採用されます。僕の場合、実際にターゲット企業やメディアと話をしている立場としての発言が尊重されています。フラットな組織体制の中で仕事ができるのはストレスフリーですね。
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