【PICK UP INTERVIEW vol.3】 理想の未来への現実的な道筋を作る仕事 ー FoE Japan 髙橋英恵さん
Hoopus.(フーパス)は、鎌倉サステナビリティ研究所が運営する、サステナビリティと気候変動問題の解決に特化した求人サービスです。PICK UP INTERVIEWでは、気候変動解決に関わるお仕事情報をピックアップ。それぞれの団体で働く人々の熱い想いや職場の雰囲気をお伝えします。
今回は、国際環境NGO FoE Japanで、気候変動の分野で活躍する髙橋英恵さんにお話を伺いました。髙橋さんは、国際協力やNGO業界をリードしていくことが期待される人に送られる2021年度アーユスNGO新人賞も受賞した、注目の若手プロフェッショナルのお一人です。FoE Japanとの出会い、そしてFoEでの活動を通して目指す社会についてお伺いしました。
※この記事は、2022年2月の取材をもとに2023年12月に一部編集を加えたものです。本文中にある肩書き・組織説明・制度内容などは最新のものと異なる場合がありますのでご了承ください。
まずは、髙橋さんがFoEのお仕事と出会うまでのストーリーを教えてください。
10歳の頃から環境問題や南北格差に興味があって、そういうことを勉強したいなと思って進学し、大学では政治哲学の中で脱成長などを学んでいました。
就職活動でもNGOへの就職を検討したのですが、NGOはそもそも募集が少なかったり、求人があっても社会人経験が2〜3年必要、大学院卒が条件だったりと新卒での就職は難しいことがわかりました。奨学金の返済もあったので、社会人経験も積むために、国際的に働ける場所を選び、会計事務所の国際税務のコンサルティングの部署に就職しました。
実際に働いてみると、各国の税制や、どうやって企業が利益を得ているのかを知ることができてすごく面白かったのですが、国際税務のコンサルティングは、公正な納税を促すというよりも、要はクライアントの税務局対策なんです。
私は学生時代から環境保全や人権保護よりも利益追求を優先する社会のあり方に疑問を持っていたので、理想とやっていることが180度違いました。それに耐えられなくなってしまい、奨学金返済も終わったころ、やっぱり環境の仕事をしたいと、転職を考え始めました。
そして、サステナブルマネージメントを学ぶために大学院留学の準備をしていたときに、FoEと出会いました。
大学院への推薦状を書いてもらうために大学の教授に会ったときに、「FoEが人を探しているよ」と先生に言われたんです。
その時は、「FoEって何?」っていう感じでした(笑)。そもそもグローバルの不公平が治らなかったら環境問題も解決できないと思っていたので、経済の不公平の問題に直接関わりたく、環境団体は視野に入れていなかったんです。
でも「会ってみるかな」という感じで、メールで連絡をとり、飯田橋で待ち合わせをして、話を聞きました。後から知ったのですが、最初に話を聞いてくださったのは事務局長の満田さんだったんです。
かなり正直に、経済の不公平に興味がある、とか、再生可能エネルギーが広がっても生物多様性や地域の生活を壊しながら進めるのはよくない、とか、思っていたことをお話ししました。
そうしたら、上辺だけの共感じゃなくて本当に共感してくれたんです。FoEがそのような問題にも取り組んでいる団体だとその時に知りました。
そして、大学院の合格通知をもらっていたのですが、FoEに入りたいと思い、改めて面接を経て就職しました。
大切にしたいことが一致するFoEと運命的に出会ったんですね。FoEの活動内容と、特に髙橋さんが担当されていることについて教えてください。
FoEには、5つの活動分野があります。気候変動、脱原発、森林伐採、バイオマス発電、そしてもう1つが開発金融と環境です。私は気候変動のチームで活動しています。
スタッフが全員で14人いるのですが、ひとりが複数のチームを掛け持ちしていて、1チームはだいたい4人くらいです。そして、総務の方が二人います。
FoEでは、「知る・つながる・かえる」というやり方をとっています。
まず現状を把握するために調査をする、そして現状を知る人を増やして一緒に行動する、そして市民の力で社会を変えていくという方法です。
国会議員や省庁への働きかけも活動の一つの手法として行っていますが、やはり、市民の力で変えたいというのが大きいです。日本が引き起こしている環境問題ならば、日本の市民の力で変えたい。「モビライゼーション」といいますが、問題を知った人たちの”変えたい”という力を、どう集めて、どう生かすか、が大切だと考えています。
チームごとに働き方はそれぞれですが、私が所属する気候変動チームでは、チームで目標を決めます。そして、エネルギー基本計画の見直しを追う人、石炭火力発電所建設中止について活動する人、というふうに、担当を決めて活動します。私の担当は、神奈川県横須賀市に建設されようとしている石炭火力発電所について、「横須賀火力発電所建設について考える会」という地元のグループと一緒に、建設を止めるために活動することです。
FoEは役割ごとの担当ではなくテーマごとの担当になっているので、例えば私自身がCOPに参加して報告会をするとなった場合は、イベントの企画、登壇者の招待とコーディネート、広報など、全部私がやります。実際大変ではありますが、初めの部分から終わりの部分まで携われるのは面白いと思います。分業ではない、職人のような働き方と言えるかもしれません。
また、自分たちの活動の成果の振り返り方について、例えば2020年から2021年にかけて注力した「ATO4NEN あと4年 未来を守れるのは今」という若者グループのFridays for Futureや他のNGOと共同で行ったキャンペーンでは、賛同人数を目標にしたり、日本の気候変動対策の強化度合いをはかるには、日本の温室効果ガス国別削減目標(NDC)の削減比率などの数値目標を設定したりしていますが、定性的な大きい目標を立ててしまいがちだと感じています。より達成度合いを計測しやすい目標を立てることが今後の課題ですね。
FoEは様々な環境・社会問題について活動していますが、FoEとして、各活動に共通するビジョンはありますか?
「正義」という価値観が、団体の中ですごく共有されていると思います。
先ほどお話しした5つの活動分野の1つである「開発金融と環境」の分野で働くスタッフは、「FoEは人権団体だ」ということもあります。
開発金融とは政府開発援助(ODA)のことで、日本の国際協力の現場で起きている問題について取り組むチームです。日本のODAは、発電所を建てる、新幹線や橋を作る、という用途が多いのですが、農地や漁村などに作られることが多く、立ち退き問題が発生してしまいます。石炭火力発電所の建設などで大気汚染などの環境問題が生じると同時に、人権問題でもあるんですよね。
ある意味、環境問題を環境問題だけとして片付けられない”欲張りな人”が集まっているのかなという気がします。
私自身も、経済の不公平の問題に元々興味がありましたし、私の2人の同期も、南北格差/グローバル格差と環境不正義はつながっているという意識を持っている人たちです。似た問題意識を持って入ってくる人が多いかなと思います。
明文化されたビジョンがあるわけではありませんが、各チームで「未来の社会はこうあって欲しいよね」とよく話しています。
同じ価値観や理想を持っている人と繋がれるってすごく大切ですよね。非現実的と思うかもしれませんが、理想に向けた現実的な道筋を作っていくのが、FoEの仕事だと思っています。
どんな人がFoEに向いていると感じますか?また、環境・社会問題に詳しくない人でも大丈夫でしょうか?
私は今FoEに入って4年ですが、当初は気候変動についてほとんど知識がなかったんです。恥ずかしながら「石炭って何?」っていう状態で入りました。
自分でも勉強しながら、FoEが市民向けに開催しているセミナーに参加して知識を深めたり、わからない部分は聞いたりしながら、仕事をしながら学びました。
感染対策でオンラインでのやり取りになってしまって直接喋らなくても、チャットを活用してよく話していますね。
新しく入ってきてくださる方も、どんどん自分から学び、動けることが大切だと思います。もちろんチームで相談しながらの活動ですが、自主性が大切な団体です。
そしてやっぱり何よりも、FoEがめざす社会のビジョンに共感してくれる方に来ていただきたいと思います。
誰かの犠牲の上に成り立つような社会に違和感がある、とか、抑圧のない社会を作りたい、とか、そういうことを一瞬でも考えたことがある人は、ぜひFoEに来ていただきたいと思います。
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