【Meet KSI vol.5】気候変動を軸にキャリアを築いていく / Hoopus.事務局 林恵美

サステナビリティスペシャリストの育成をめざす「鎌倉サステナビリティ 研究所(KSI)」のメンバーのこれまでのキャリアや、気候危機をはじめとした環境問題に関わる思い・課題を聞いていきます。今回は、サステナビリティ・気候変動に関わる仕事をはじめたいというみなさんをサポートする求人サービス「Hoopus.」の事務局・林恵美のストーリーをお届けします。

こんにちは。KSIで、サステナビリティ・気候変動に特化した求人サービス「Hoopus.(フーパス)」の事務局を担当している林恵美です。

私はこれまで10年ほど、気候変動や環境問題に関わる非営利セクターで仕事をしてきました。熱意や専門性をもったプロフェッショナルが非営利セクターに転職するのを支援することで、気候変動対策を加速させていくというHoopus.の価値に共感し、非営利セクターの仕事と並行しながら、Hoopus.に事務局スタッフとして携わっています。

気候変動に関わる非営利セクターの仕事に関心を持っているみなさんへ、非営利セクターで働く現場の一人として、アドバイスをさせていただけることが、大きなやりがいです。

編集者から環境NGOへ

とはいえ、最初から非営利セクターで働いていたわけではありません。

キャリアのスタートは教育系の出版社で、学生向けの進路・生活情報誌の編集を担当していました。いわゆる大企業に数えられる会社でしたが、教育への使命感が強く、ユニークな価値観を持っている会社だったので、熱意のある上司や先輩・同僚に恵まれたこともあり、営利企業とはいえミッションドリブンな働き方をさせてもらっていました。

その後、ヨーロッパに転勤になった家族に帯同するため退職し、しばらくフルタイムの仕事から離れて、勉強などに集中することができる時期を過ごしました。

日本に帰国することになり、日本での仕事を考え始めた時、一番に頭に浮かんだのは、環境問題に関わる仕事をしたい、ということでした。

一度仕事を離れたことで、これからどんなことに自分の時間を使っていきたいのか想像する機会になり、子どもの時から大きな関心ごとだった環境問題のことをまた考え始めたのだと思います。ヨーロッパの市民やメディアが、政治や社会課題に対してオープンで、日本もこうなったらいいのに、と刺激を受けたことも理由の一つです。

その後、国際環境NGOに応募し、デジタル・コミュニケーションに関するポジションで採用いただけることになりました。

「好きなことをしてお金までもらえる」

とにかく働くことに飢えていた私は(笑)、働けること、しかも小さい時から関心のあった環境問題に関する仕事ができることが嬉しくて、「好きなことをしてお金までもらえるなんて!!」と考えるほど、楽しく仕事をしていました。この団体は、活動資金、つまり私たちのお給料を、理念に賛同する個人サポーターによる寄付でまかなっていたため、信頼して支援してくださる方のおかげで仕事として環境活動ができるということも、原動力になりました。

仕事の内容は、ウェブサイトやSNS、Eメールなどのツールを使って、団体が取り組む気候変動やプラスチック汚染などのトピックへの関心を高め、政府や企業に対する働きかけに参加を呼びかけるデジタルキャンペーンの企画でした。

デジタルツールを使った発信の経験はありませんでしたが、編集者時代に叩き込まれた、オーディエンスを理解し、目指す状況へ導くストーリーを作るというコンテンツ企画の手法をそのまま生かすことができたと思います。もちろん、デジタルならではの特徴を学びながら、失敗も繰り返しながらではありましたが。

気候変動への取り組みをキャリアとして考える

しかし、働いていると当然、難しいことにも直面します。

気候変動に取り組む非営利セクターでは、1.5度目標という大きな目標に対して、実現可能な小目標を立て、戦略的な筋道を立て、行動計画に分解して仕事を進めます。ですので、確実に前進はしているのですが、個人個人の仕事が、日常レベルで、気候変動解決にどの程度貢献しているのかを日々実感することは、簡単ではありません。

一度弱気になると、続けることに意味があるのか、この方法で本当にいいのか、そんな疑問も抱き始めます。同時に、やりたいことをやってお給料までもらっているんだから全力でやらないと、という自分自身からのプレッシャーもありました。今振り返ると、ものすごく真面目ですね…。

そんな時に、副業として関わり始めたのが、KSIのHoopus.でした。サステナビリティや気候変動対策を仕事にしたいという方へ、非営利セクターのキャリアや働き方についてお話ししたり、情報提供したりする仕事です。

Hoopus.として本業とは違うチームを持ち、非営利セクターとして働くということを客観的に見るようになったことで、少し視点が変わったように思います。

気候変動へのアプローチは多様で、自分の希望する働き方や関わり方も変化するのが自然です。そして団体側も組織として成長するにつれて変化します。自分や環境の変化に合わせて、働く場所、働き方を変えてもいいのではないか。

7〜8年間1つの団体で働いていたので客観的に考えづらかったのだと思いますが、そう思えるようになってから、自分にとってのサステナビリティ・気候変動への取り組みを、もっと自由に、幅広く考え始めることができたような気がします。

転職サポートから農業まで

今は、気候変動コミュニケーションを専門とする国際団体で働きながら、Hoopus.の事務局で環境非営利セクターへの転職をサポートし、地元の有志グループを作って自治体で使い捨てプラスチックを規制するための取り組みをしたり、有機・再生型農業を営む友人の畑でお手伝いさせていただいたりと、いくつかの形で気候変動・環境問題に関わっています。

ボランティアしている畑にて

ミッションに共感する1つの団体で熱意と労力をすべて投入する、という時間が数年続いた分、今はこのバランスがとても心地よく感じています。

NGOだけでなく、大きな企業で働く人、環境ベンチャーの人、自治体の人、地域の活動家、主婦、学生など、さまざまな立場の人と関わりを持つようになったことで、前よりも気候変動への取り組みをもっと複合的に考えられるようになりました。

広がる非営利というキャリアの選択肢

気候変動対策をめぐる社会の変化とともに、非営利でのキャリアの選択肢も増えています。(詳しくはこちらをご覧ください)私自身、一度非営利セクター内で転職できたことで多少の自信がつき、これからも気候変動という軸を持って自分を成長させられるキャリアを築いていけたら、と考えています。

非営利セクターで働いたことがないという方にとって、非営利セクターへの転職は大きな変化だと思います。私自身は企業から転職した後、後悔したりギャップに悩んだりしたことは1度もありませんでした。

むしろ、企業で身につけたスキルを非営利セクターで活かせたり、非営利セクターならではの社会変革のための戦略的思考を学ぶことができたり、同じ熱量で環境問題や政治について話すことができる仲間ができたりと、セクターを超えて転職したからこそ得るものも大きかったと感じています。

これからは、企業から非営利、そしてまた企業など、セクターを横断してキャリアを築いていくことが普通の社会になると私は思っています。

非営利セクターでの仕事にご関心がある方は、ぜひ一度Hoopus.に登録して情報を覗いてみてもらえたら嬉しいです。

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