【PICK UP INTERVIEW vol.2】 キャリアチェンジの流れを逃さない価値観と一致する働き方 ー 地球環境戦略研究機関(IGES)庄かなえさん

Hoopus.(フーパス)は、鎌倉サステナビリティ研究所が運営する、サステナビリティと気候変動問題の解決に特化した求人サービスです。PICK UP INTERVIERWでは、気候変動解決に関わるお仕事情報をピックアップ。それぞれの団体で働く人々の熱い想いや職場の雰囲気をお伝えします。 

今回は、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)でマーケティング・コミュニケーションズ ディレクターを務める庄かなえさんにインタビューさせていただきました。庄さんは、6度の転職を経て7社目としてIGESに入職しました。様々な職場を経験してきた庄さんの視点から、環境問題に取り組む研究機関であるIGESの働き方、魅力をお伺いしていきます。

※この記事は、2022年1月の取材をもとに2023年12月に一部編集を加えたものです。本文中にある肩書き・組織説明・制度内容などは最新のものと異なる場合がありますのでご了承ください。


地球環境戦略研究機関 庄かなえさん

環境問題について幅広く研究する地球環境戦略研究機関(IGES)は、どのような活動をしている機関ですか?

地球規模の環境課題については、他の国と連携したり、情報を集めたりすることが欠かせません。IGESでは、主にアジア・太平洋地域での持続可能性について研究活動をしていますが、研究を通して、政府や自治体、企業などの政策決定者の意思決定に貢献することを目指しています。

IGESには4つの研究分野とそれらを統合する研究ユニットがあります。1)気温上昇を低減し脱炭素社会の実現に向けた研究を行う「気候変動とエネルギー領域」、2)サーキュラーエコノミーや廃棄物管理などを研究する「持続可能な消費と生産領域」、3)生物多様性、森林減少や土地活用などを研究する「生物多様性と森林領域」、4)気候変動の影響への対策と強靭な社会づくり、持続可能な水資源管理について研究する「適応と水環境領域」、そして、 SDGsを軸にIGESの研究を横断的に統合し、持続可能性を追求する「サステイナビリティ統合センター」です。

さらに、環境課題の解決には多くのアクターを巻き込んでいく必要があるので、環境問題に大きな影響を持つ3つのステークホルダーについて、その動向を研究・連携し、より良い意思決定に貢献することを目指すタスクフォースがあります。

1つは自治体との連携を通じ、日本だけでなく世界中の都市の持続可能性を推進することによって、地域や国の持続可能性に貢献することをめざす、都市タスクフォースです。

もう1つはファイナンスタスクフォースです。SDGsやパリ協定の実施のためには、多様で多額の資金が必要です。特に持続可能な開発に向けた民間資金のシフトを促すサステナブルファイナンス分野に焦点を当てています。

そして3つめはビジネスタスクフォースです。環境課題の解決に、企業は大きな役割を果たします。IGESは、日本気候リーダーズパートナーシップ(JCLP)という、現在では200を超える日本企業が参画する持続可能な社会を目指す企業グループの事務局を務めています。JCLPを通して、日本国内の企業の脱炭素への取り組みなどをサポートしています。

複数の研究分野とタスクフォースがある中で、団体内ではどのように協働・協力していますか?

これまでは縦割りになることもあったのですが、現在では、各研究分野を横断する、クロスユニットのプロジェクトや情報交換に力を入れています。環境問題や社会問題は相互に影響しあっています。ある問題へのアプローチが、他の問題に負の影響を与えることもあります。

例えば、森林を増やすために植林をすると、農地が減って食糧生産や貧困問題に影響してしまいます。逆に、気候変動対策として石炭火力発電を減らした結果、大気汚染が改善されるなど、相互に良い影響を与えるコベネフィット(Co-benefit)のような関係もあります。

また、それぞれの環境問題の影響は年々広く、大きくなっているため、1つの課題に対して多面的なアプローチが求められるようになってきています。そのため、部署横断で取り組むことを推進する動きが必要になってくるんです。

IGES、そして広報チームのメンバーについて教えてください。

200人ほどの職員の中で、150人ほどが研究員です。

広報チームは、5人で活動しています。私を含めた3人が、IGES内の各研究ユニットとサテライトオフィスの広報・コミュニケーションを分担して担当しています。

取材対応やウェブコンテンツの更新、ソーシャルメディアやニュースレターの配信のほか、IGESの活動を外部に紹介する企画を作って提案したり、メディア向けのイベントの企画をしたりします。そして、ウェブサイトを管理するエンジニア、英語のネイティブチェックや原稿執筆をするアメリカ出身のスタッフがいます。

IGESは研究活動だけでなく、ステークホルダーへ働きかけて持続可能な社会に向けた行動の実践をサポートするプロジェクトも行なっているそうですが、具体的にどのようなプロジェクトを行っているのでしょうか?


海外の事例になりますが、わかりやすいところでは、東南アジアの地域で、廃棄物処理に関するプロジェクトがありました。日本で培われてきた廃棄物処理のノウハウを活かして、東南アジアの国々をサポートするプロジェクトです。

廃棄物処理ではルールを決めるだけではなく、それを実践する自治体の担当者へのサポートが欠かせません。教育コンテンツを作ったり、トレーニングのためのワークショップをしてノウハウを実務に落としこんだりします。

こうしたプロジェクトの場合、自治体とのやりとりを通じて、どのようなシステムが必要なのかを明らかにし、ルール作りに必要な知見を共有し、政策作りをサポートします。

こうした国内外のプロジェクトに取り組むため、IGESには神奈川県葉山にある本部に加えて、5つのサテライトオフィスもあります。国内では、北九州市、神戸市、港区新橋。そして海外では、バンコクと北京です。環境省や神奈川県、海外のファンドなどからの委託・受託事業も行っています。

IGESのミッションである「持続可能な社会の実現」に貢献するための独自の研究は、4年を1期の研究期間として、期ごとに計画を立てて活動していきます。

庄さんご自身は、非営利団体での勤務はIGESが初めてだったとのことですが、企業での働き方と違いを感じますか?


多くの場合、企業では会社の売り上げや株主が優先されますが、利益を生むことと地球環境を守ることは、必ずしも一致しません。

嘘をついちゃだめ、地球の資源には限りがあるよ、みんな平等にね。そんな子どもの頃から教わってきている価値観と仕事の内容が一致しないことも、時にはあるかもしれません。「どうして仕事だとそれが許されるんだろう?」と疑問に感じながら社会人をやってきていました。常に自分の価値観や倫理観に正直でありたいという欲求が仕事では満たされないと感じていたのです。

IGESでの仕事では、そうした葛藤を感じることがあまりありません。倫理的ストレスがないということは、とても心地の良いものだと実感しています。必要なところに必要な情報を届けることが、広報やコミュニケーションをする立場として重要なことだと思っていますが、IGESでは迷うことなく、全力でこの仕事に取り組むことができます。

IGESに入った当初は、いつか元々いた業界に戻りたいという思いもありました。以前働いていたラグジュアリーブランドから声をかけられたこともありますが、今は「その贅沢って、その便利って本当に必要なんだっけ?」と思ってしまう自分がいます。

これから歩んでいくキャリアでも、こうした自分の新しい価値観と相反しない方向を見つけなければいけないと思っています。

これから環境課題の解決に携わる仕事に転職したい、副業を始めたい、という方へアドバイスをいただけますか?


私の座右の銘は「漂えど沈まず」です。

二つ意味があると思っているのですが、一つは、大きな流れに流されても沈むことのないしなやかな強さを持つ、ということ。そして、漂っていなければ沈んでしまうという、一カ所にとどまっていられない人間の性のようなもの。

このどちらも、私のこれまでの生き方を映しているように思います。

私のキャリアパスを見ると、強い意志を持っていると思うかもしれませんが、私自身の感覚としては、その時の流れに乗っているだけなんです。そもそも漂っているのがデフォルトだと思っているので、流されることに抵抗もないんでしょうね。

流れが来たなと思うときに、ちゃんとその流れに乗っていく。流れた先に何があるかわからないのはみんな同じです。でも、行った先には、必ず何かあります。

行った先で今と違うものにたどり着くかもしれないし、今の延長にたどり着くかもしれません。その時のことはその時に考えればいい。

不安もあるかもしれませんが、その流れに乗ってしまったら、なんとかなります。沈まなければ良いのです。


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